あらすじ
ぼくの飼い猫のピートは、冬になるときまって「夏への扉」を探しはじめる。家にあるドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。そして1970年12月、ぼくもまた「夏への扉」を探していた。親友と恋人に裏切られ、技術者の命である発明までだましとられてしまったからだ。さらに、冷凍睡眠で30年後の2000年へと送りこまれたぼくは、失ったものを取り戻すことができるのか──新版でおくる、永遠の名作。解説/高橋良平
Amazonより引用
読んだきっかけは岡田斗司夫
岡田斗司夫が昔の講演で「経営者はハインラインを読むべき」と言って勧めていたのを思い出して読みました。
ジャンルは、いわゆる「タイムトラベル物」です。
なんでも、あのバックトゥザフューチャーの元ネタらしいですよ。Wikipediaにそう書いてました。
最近実写化もしました。
独特の読みにくさは想像力で補え
この本を最初に読んでまず思ったのが、読みにくい。
新訳でだいぶ緩和されているとはいえ、流石に半世紀以上前の小説。
岡田斗司夫が言うには、訳が悪いわけじゃないそうなんですよ。
この頃のSFは敢えて細かい描写を飛ばしていたそうです。
たとえばこの作品には、主人公の作り出した発明品がたくさん出てくるんですけど、読んでも読んでも、なんのこっちゃ分からないんですよ。
この分からない部分を「想像の余地」として楽しむのが、この時代のSF小説読みの嗜みなんだそうで。
話の作りはタイムトラベル物としてかなりオーソドックス。
主人公が過ちを修正するために過去と未来を行き来する話です。
まあ、50年以上前の小説なんだからオーソドックスもクソも無いんですけれども。
猫がアホほど可愛い小説としても有名な本作ですが、意外と猫の出番は少なめ。
でも序盤、気まぐれなペットの猫が主人公のために戦う展開は、猫好きの考えた夢小説かと思うぐらい素敵でした。
地に足のついた未来予想が面白い
僕が夏への扉で一番面白いと思ったのは、登場する技術が決して荒唐無稽じゃなくて、少なからずリアリティが存在するところ。
たとえば同じSFでもドラえもんって、出てくるひみつ道具が割と荒唐無稽ですよね。仮に今から200年経ったとしても、どこでもドアとか通り抜けフープが発明されてる気がしないじゃないですか。
夏への扉でも出てくるのはドラえもんと同じような未知の技術なんですよ。でも、「その技術は20年後にあっても不思議じゃないな」とか「その技術が出来たら社会は確かにそうなるよね」と読んでる最中は思わせてくれるんですよね。
たとえば作中ではコールドスリープで寝てる間に投資信託で資産運用してくれるみたいな保険会社のプランが出てくるんですよ。
読んでて「確かにコールドスリープ技術あったらそういうこと言う会社出てきそうだわ!」と思っちゃったんですよね。
あと驚いたのが、作中では架空の技術のつもりで書かれたであろうものが、今の時代だと一部実現していること。
たとえばハイヤーガールという自動お掃除ロボットが出てくるんですけれども、説明を読めば読むほどルンバでしかないんですよね。
もちろん、作品が書かれた時代にルンバなんてあるはずもないですよね。
すべてがFになるを読んだときも、今の時代だと当たり前にあるものが、架空の未来技術としてほぼ正確な形で登場していることに驚いたのですが、こういう地に足の付いた未来予想を行っているSFの源流はハインラインなのかなと思いました。
「経営者はハインラインを読むべき」というのはマジでそうなのかもしれません。
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