あらすじ
はるか未来、あるところにシンデレラという人類の進化形=トランスヒューマンの少女がおりました。〈魔女〉から拡張現実ドレスを与えられた彼女はカボチャ型飛行体に乗り、お城の舞踏会へ向かいます。しかしその夜、空から宇宙最強の爆発・ガンマ線バーストの閃光が降り注ぎ――「地球灰かぶり姫」ほか「竹取戦記」「スノーホワイト/ホワイトアウト」など、古典に最新の想像力を配合した童話改変SF全6篇を収録。
超個性派による第6回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作!
Amazonより引用
感想は画像下から。
おとぎ話+強化改造人間+ガンマ線バースト
シンデレラ、竹取物語、白雪姫。誰もが知っているおとぎ話に、トランスヒューマン(強化改造人間)要素を混ぜた小説。
元ネタのおとぎ話に無い要素として、話のどこかで空からガンマ線バースト(浴びたら死ぬ宇宙最強の光線)が降り注ぎます。
口の上手いSFオタクが酒を飲みながらディスコードで爆笑しながら喋った与太話みたいな内容。
これを真面目に小説にして、あまつさえ出版までしてしまったのは割とどうかしてますよね。
でもオタクってこういうの大好きですよね!僕は好きです!!!
この設定でエモい終わり方をしているのが憎い。
人間の想像力の豊かさを見せつけられるような短編集
最初に収録されているシンデレラのパロディ小説は個人的にはちょっとイマイチ。
話がどこに向かっていくのか悪い意味で予測不可能すぎ。
世界観に付いていくのが精いっぱいでした。
次に収録されている竹取物語のパロディはもう最高。
竹取の翁がアーマーモードの狩衣を着込んで、竹が送り付けてくるウイルス混じりのスパムメールをフィルターしていたところ、竹の中から小さな女の子が飛び出して――という内容。
このあらすじだけでオタク臭くてウンザリした人もいるかもしれませんが、ハマる人にはカチッとハマりそうな一作。
ストーリーはここから竹取物語をベースにとんでもないスケールの話に膨らんでいきます。
続く白雪姫のパロディも抜群の面白さ。
主人公は白雪姫――ではなく、「鏡よ、鏡、この世で一番美しいのは誰?」と魔法の鏡に問いかける女王様です。
もちろんただの女王様ではありません。
山も海も川も支配し、コンバットドレスを纏い、手から多重分身しながらプラズマ光線を発射することが出来、空をも自由に飛べる最強の女王様です。
こんな小学生が考えたみたいな性能のキャラを、白雪姫のお話に沿いながらどのように動かすのかと思っていたんですけれども、色んな意味で意表を突かれた話です。
おとぎ話+強化改造人間+ガンマ線バーストという難しい縛りの中で、どこまで自由に話を広げるのかというのが見どころの作品集です。
話によって出来不出来の差が激しいのが欠点ですが、なかなか面白い小説でした。
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