自分とジョジョの付き合いは高校生の頃からになります。
その当時は「オタクだけが知っている隠れた名作漫画」ぐらいの立ち位置だったと思います。
まあ、長寿作品なんで「なんとなくこの漫画は10年先もやっているんだろう」とは思っていましたが、まさかあの個性的すぎる絵柄のままアニメ化して一般人にも親しまれる漫画になるとは思いもしませんでした。
今回読んだのはそんなジョジョのスピンオフ漫画「岸部露伴は動かない」の更にスピンオフ短編小説集、「岸部露伴は叫ばない」です。
どうも荒木先生が完全ノータッチっぽい企画ですが、原作好きなら問題なく楽しめる出来じゃないかと思います。
概要
JOJO第四部『ダイヤモンドは砕けない』の登場人物である、杜王町在住の人気漫画家・岸辺露伴。
面白い漫画を描くためには手段を選ばず、リアリティを追求し続ける男が遭遇する、奇妙な事象の数々とは……!?2か月連続刊行・第一弾「岸辺露伴は叫ばない」に収録されている短編は、『くしゃがら』『オカミサマ(書き下ろし)』by北國ばらっど、
『Blackstar.』by吉上亮、『血栞塗』by宮本深礼、『検閲方程式』by維羽裕介の、5作品。未知への好奇心が導く、恐怖と驚異の物語。
Amazonより引用
ここからは各短編の感想です。
くしゃがら/北國ばらっど
「くしゃがら」という言葉が気になって仕方がない漫画家・志士十五の話。
各短編の中で一番出来が良かったです。NHKでドラマ化されてたのも納得。
「岸部露伴は動かないシリーズ」というかジョジョ4部の魅力は、宝くじが当たったかもしれないとか、幽霊の出る小道の噂みたいな、日常のしょーもない出来事にオーバーリアクションしているうちにいつの間にか大事件に繋がるところなんですけれども、この作品はそういった細部の再現が完璧で一番ジョジョ4部っぽかったんですよね。というか、そういった部分がジョジョ4部の魅力だったことをこの小説で気付かされました。
「気になって仕方がない言葉がある」というところから始まる話の導入や、志士十五というキャラクターの異常性など、本質的なところが荒木イズムに溢れていてかなり良いです。
原作にあったセリフ回しをちょいちょい挟むとかで「ジョジョ愛」とか言うのはにわかだと思うんですけれども、この作品はちゃんと「ジョジョ愛」で作られていると思いました。
何気に作中随一のチート能力であるヘブンズ・ドアーにも上手く制限を掛けていて面白かったです。
Blackstar./吉上亮
クトゥルフ風B級ホラー。遭遇した人間を全て行方不明にしてしまう謎の男と露伴が遭遇して……という話。
「岸辺露伴は動かない」というよりもジョジョ本編っぽい感じ。ネタは面白いけれども、ちょっと荒木先生が描きそうになさそうすぎて、僕の中では評価が低め。アニメ化したら一番面白そうなのはこの作品なんですけどね。
血栞塗/宮本深礼
岸辺露伴が不幸を呼ぶ真っ赤な栞を探し回る話。
岸部露伴といえば好奇心だけをガソリンにして動く変態漫画家なわけですが、その彼の好奇心そのものが話のテーマになっています。
岸部露伴は動かないシリーズは「事件が主役であって岸部露伴自体は添え物である」というスタンスで作られていると僕は思っているんですよね。だから「岸部露伴の好奇心(=岸部露伴そのもの)」をテーマにした話というのは他の作者が手掛けるスピンオフならではの話ですね。
検閲方程式/維羽裕介
解けば別次元に干渉できる方程式の話。ややクトゥルフ気味で、ちょっとゾッとする話。
荒木先生は感覚派っぽいので、方程式っていう理系匂いのするギミックはあまり使わなさそうなんですよね。これも他人の描く「岸部露伴は動かない」だからこそ読める作品じゃないかと。
ヘブンズ・ドアーで覗いた他人の人生が短編小説のようになっているというギミックも小説版ならでは。なかなか良かったです。くしゃがらの次に面白かった。
スタンドの使い方が一番荒木先生っぽかったのはこの短編ですね。
オカミサマ/北國ばらっど
オカミサマという不思議な宛名の領収書を巡る話。くしゃがらと同じ作者が描いた短編です。
軽くネタバレしてしまうと、オカミサマとは領収書に書くだけでその金額が帳消しになる魔法の宛名です。その代わり、本人にある異変が起こるというものなんですけれども、どういう異変が起こるかは本編を読んでのお楽しみということで。
ぶっちゃけ6部に出たスタンド、マリリン・マンソンを4部風に焼き直した話なんですけれども、これもくしゃがらと同じく4部テイストが濃く出ているので面白かったです。
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