【読書感想】転売は人を貧困から救い出す最高のビジネスだ!!(不道徳な経済学/ウォルター・ブロック)

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ホビージャパンという模型雑誌の社員が公式ツイッターで「高額転売は買った人間の当然の権利!買えないやつは努力をするべき!!」という旨のツイートをしたところ、それはもう見事な燃え広がり方をして当人はなんかクビになったらしいんですよね。

www.itmedia.co.jp

基本的に「転売ヤーには人権は無い」というのが世界の合意であり、転売ヤーを擁護する理屈はどんなものであっても許されるべきではないという空気を感じます。

しかし転売ヤーは本当に死ぬべきなのでしょうか。もしかして我々は細かい理屈なんて考えずに、一時の感情だけで転売ヤーを非難しているんじゃないですか?

今回の本は経済学的に考えるなら転売ヤーはむしろ役立つから生きるべきという我々には到底受け入れがたい主張を行っています。

結論だけ言われると何だかエキセントリックな主張に聞こえますが、間の理屈を聞くと何だか納得せざるを得なくなるのがこの本の面白いところです。

これから書く意見を読んで「それは違うよ!」と思う人もいるだろうし、逆に超頷く人もいるかもしれません。

とりあえず僕は本に書いてあることを説明しているだけなので、僕のことは叩かないでください。

不道徳な経済学 転売屋は社会に役立つ (ハヤカワ文庫NF)

 

 

 

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概要

ヤク中、ダフ屋、売春婦、悪徳警官……「不道徳」な人々を憎悪し、袋叩きにする現代社会。本当は彼らこそ、国の抑圧を耐えぬき我々に利益をもたらしてくれる「ヒーロー」なのに! 自由という究極の権利を超絶ロジックで擁護し大論争を呼んだ全米ベストセラーを、人気作家・橘玲が超訳

 

Amazonより引用

 

大前提:自由って素晴らしい

この本の論はリバタリアニズム(自由主義)と呼ばれる哲学を基本として組み立てられていて、それを僕なりに柔らかくかみ砕くと他人の権利を侵害しない限りはそれは道徳的であるとみなす哲学です。

たとえば殺人や強盗はリバタリアニズムでは強く批難されます。何故ならその人の持つ生きる権利や、財産の所有権を強奪しているからです。”自由主義”と和訳されるだけあって、自由を阻むものは国家のルールすらも許しません。

逆にそのルールに反しない限りはすべて「市場の原理に基づいた合理的な判断(つまり道徳的かどうか考えるまでもない)」とみなされます。

 

転売は需給バランスを設定出来ないから起こってしまう

そもそも転売が何故発生するかというと、需要が多いのに供給が少なくて、そのくせ定価が安いからです。

たとえばPS5は定価が約5万円なんですけれども、転売ヤーがそれを10万円で売りさばいたとしたら市場価格は10万円ということですよね。じゃあ最初から本当に欲しい人には10万円で売るべきですよね?

USJでは列を無視してアトラクションに乗れる権利が販売していますけれども、それと同じようにソニーでも「本当に欲しい人には希望小売価格より高い値段を出したら人より早くPS5を手に入る権利」を売れば解決すると思いませんか?

ソニーがPS5を10万円で売らない理由として考えられるのは「長い行列があると格安で宣伝になるぞ」というスケベ心とか、本当にPS5を10万円で売ったらツイッターで叩かれるからとか、そんなところじゃないでしょうか。まあ、それだけが理由じゃないかもしれませんが。

 

一番公平な方法、それは転売ヤーから購入すること

さて、どんな理由かは知りませんが、ソニーが価格による需給バランスの調整が出来ないのであれば以下の2つの方法で供給を制限しますよね。

①購入資格を限定する

たとえば社員の家族になら売っていいよーとか、過去にPSストアで買い物した人だけには売っていいよーとか。

でも、その特定の集団に所属出来るかどうかは運ですし、そこに所属出来なかった人はどうすればいいんでしょうか。

そこで一番公平と考えられるのが

②先着順に販売する

ですよね。

しかし、PS5を先着順で販売するとしても、世の中の人間がみんな朝から待機出来る暇人でもないわけです。

強い言い方をすればこれはある意味「職業差別」とも言えます。たまたま発売日が休みの職業に就けたというだけでPS5を買う権利を手に入れられるというのは不平等に感じませんか?

そこで登場するのが「自分の代わりに人を雇って並んでもらう」という選択肢です。つまり転売ヤーを間に挟むことですね。結局お金で解決することが一番平等なんですよ。

 

転売ヤーは低所得労働者を救う

ここで「結局転売ヤーを介して買ったら金持ちしか買えないじゃん。それこそ職業差別じゃないの?」と思うかもしれないんですけれども、そこは否定しません。

しかし、転売ヤーは見方によっては下層階級を大きく助けてるんですよね。

普通の人がまともな商売をしようと思うと元手がすごくかかるんですけれども、転売は買うべき商品さえ知っていたら誰でも出来る超簡単な商売じゃないですか。それって専門的な知識がなくても向上心のある人間が貧困を脱出するきっかけになると思いませんか。

それに大手の転売ヤーにもなるとホームレスやお金のない海外留学生を雇うことでたくさんの商品を買うので、転売ヤーは低所得者層に対して雇用を生み出してるとも言えるんですよ。

それだけではありません。実は転売ヤーは我々中産階級の役にも立つんです。

何故かというと、転売ヤーは我々が会社を休んでPS5の行列に並ぶ手間や損害を彼らは肩代わりしてくれているんですよ。

実際、会社休むのが面倒な人にとっては人間関係をグズグズにするよりも転売ヤーから買った方が得じゃないですか。

ここまで読んで、「お金を持ってない人はPS5を手に入れられないのか!金持ちを優遇しすぎだ!!と怒る人もいるかもしれないんですけれども、でも市場ってそういうもんですし。

我々が市場経済で生きる以上、市場経済の勝者が得をするのはある意味当たり前で、転売ヤーは「PS5を早めに手に入れることが出来る」という形で金持ちの努力に報いてるんですよね。

 

さて、皆さんいかがだったでしょうか。

本の中では同じような調子で「麻薬の売人はもっと増やすべき」「労働基準法以下の金額で人を働かせる会社は存在するべき」とムチャクチャな主張をしています。どんな調子で擁護しているのか気になる人は是非買ってみてください。

 


 

 

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