【映画感想】死んでしまった方がいい価値観と、守るべき価値観の闇鍋(サマーウォーズ/細田守特集③))

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細田守特集第3弾です。大学生のときはこれをスクリーンで見て涙を流していたんですけれども、今見るとお前も田舎の絆の素晴らしさが分かる真人間になれと映画を通して囁かれているようでゾワッとします。

泣けるシーン、良いシーンはあるんですけれども、僕自身がアットホームな職場系の人間に壊されてきたんで、じめっとした人情の無条件肯定みたいなこの映画を素直に見ることが出来んのです。

サマーウォーズ

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  • 神木隆之介

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あらすじ

人々は、ショッピングからゲーム、各種のコミュニケーション、そして行政手続きに至るまで、生活の多くをインターネット上の仮想世界“OZ(オズ)”で行うようになっていた。ある夏の日、友人の佐久間とともにOZの保守のアルバイトをしていた高校生・健二(けんじ)は、あこがれの先輩・夏希(なつき)から、一緒に彼女の田舎まで旅行をするという「バイト」に誘われる。長野の夏希の実家・陣内家(じんのうちけ)は、戦国時代から続く名家で、曾祖母の栄(さかえ)ばあちゃんを筆頭に個性豊かな面々がそろったエネルギッシュな大家族。バイトの内容は、この家族たちの前で夏希のフィアンセ役を演じるというものだった。

 

Amazonより引用

  

男も女も老いも若きもみんなあざとい

まず夏希先輩は超可愛いじゃないですか。

自分の可愛さを自覚して男を釣るところはあるものの、どことなく清楚で、主人公のような冴えないオタクに優しくて、黒髪色白で白ワンピースがよく似合う。もう完璧。自分の顔によく似たアバターに鹿耳をくっつける絶妙なあざとさも含めて可愛い。

あと、佳主馬が可愛いことは満場一致だと思うので多くは語りませんけれども、栄おばあちゃんがババア系強キャラに求められている物を全て備えていることには触れたいですね。

作中随一の強キャラでありながら、主人公の理解者ポジションであり、物語の佳境に入ったところで主人公に後を託しながらフェードアウトしていくという完璧なババアキャラですよ。これはもう全ての人類がババアキャラに抱いている幻想を詰め込んだアーキタイプババアと言っても過言ではありません。

男キャラも男気が服を着て喋ってるみたいな佳主馬の師匠とか、ヒロインに横恋慕するちょいバカで可愛いところがある警官とか、嫌味でニヒルだけど優秀なおっさんとか、とにかく全体的にあざとい。このあざとさは僕の中で評価が高いです。

 

アットホームな職場的価値観がどうにも苦手

しかし、「田舎の人情味」の光の部分だけを見せて「昔ながらの絆最高!」みたいなことを映画を通して主張しているのがどうにも受け付けないんですよね。

家族の飲み会で親戚のおっさんが主人公に「もうヒロインとヤッたのか?」と聞いてくる場面は自称アットホームな職場だった僕の前職の飲み会を彷彿とさせて嫌気がさしたし、栄ばあちゃんが強キャラっぷりを発揮して国のえらいさん達に「あんたなら出来る」とクソの役にも立たなそうな激励の電話をかけ続けるシーンも必要な議論をすっ飛ばしてアットホームな職場的な論法で問題を解決しようとする前職を思い出してやっぱり嫌気がさしました。

なんだか「古き日本を守ろう!」というプロパガンダ映画を見せられてるみたいなんですよね。

 

強キャラババアのフェードアウトは泣けるし、あの有名な「よろしくお願いしまあああああす!!」のセリフのシーンは主人公が自立したことやババアから大切な物を引き継いだことを表現していて好きなんですけれども、死んでしまった方がいい価値観と守るべき価値観を闇鍋にして出してきていて、「面白い…けどあまり褒めたくない……」という複雑な気持ちになる映画でした。

 

泣ける映画が良い映画とは限らない好例。

 


 

 

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