【読書】「三度読み推奨ミステリー」のキャッチコピーに偽りなし。読んだ数だけ味の変わる恋愛短編集(ずっとあなたが好きでした/歌野晶午)

小説
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タイトルと表紙でビビッと来た人は多いはず。僕もそのクチです。 

ずっとあなたが好きでした (文春文庫)

 

 

 

 

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概要

「二度読み必至」を超えた、三度読み推奨ミステリー! あなたはこの企みを見抜けるか!?

年齢を偽ってスーパーでアルバイトする中学生の大和。バイト仲間の高校生・三千穂といい雰囲気になったが、正社員の宗像主任が露骨に2人の邪魔をする(「ずっとあなたが好きでした」)。

脱サラして立ち上げた会社が倒産、妻にも逃げられた五十嵐は、富士の樹海でネットの自殺サイトで知り合った男女と集団自殺をはかるドライブに出る。しかし、自殺仲間の一人、仁木智子に恋心を抱いていることに気づき(「黄泉路より」)。

弓木が通う小樽の小学校に東京から転校生がやってきた。人形のようにかわいく、裕福な生活を送る有坂弥生。風邪で休んだ弥生にプリントを届けにいった弓木は、彼女の部屋にも入る機会を得たのだが、思いがけずネックレスを持ち出してしまい……(「遠い初恋」)など13作を収録。

恋をめぐる小説集……だが?
サプライズ・ミステリーの名手が書く恋愛小説集が一筋縄でいくはずがない!
この企みに気づいた瞬間、あなたはまた最初から読み直したくなる。

 

Amazonより引用

 

歌野晶午の時点で「普通」じゃ終わらない

作者の歌野晶午といえば現代日本の本格ミステリーを代表する作家のひとり。代表作の葉桜の季節に君を想うということ は僕が今まで読んだ中でも屈指の名作で、人に小説を勧めるときはほぼ必ずこれを推します。

「葉桜の~」はタイトルに不釣り合いなほどに軽薄な文体でありながらも、最後の最後に驚きと共にタイトル回収を行う素晴らしい小説なんですけれども、(この小説のことが気になったからといってAmazonレビューを見てはいけない。何故なら人の心が足りないやつらがレビュー欄にネタバレを平気で書いているから。面白さは保証するから黙って買おう!!)そんな歌野晶午が「ずっとあなたが好きでした」なんてタイトルの小説を発表するなんて、ただごとじゃない。というか驚きを用意してないわけないだろ!!という期待を込めて買った小説です。期待していた通り、質の良いサプライズを用意してくれていました。

 

恋愛小説としての面白さは怪しい

ジャンルとしては恋愛小説。色んなシチュエーション、色んな年代の男女の恋愛を集めた短編集です。

歌野晶午らしい驚きを用意してくれているものもあれば、「なんじゃこりゃ」としか言いようのないものまで、クオリティも様々。正直な話、面白いものと「なんじゃこりゃ」の比率が4:6ぐらいなので読みながら結構心が折れかけました。「恋愛小説なのに登場人物の魅力が全然伝わってこねえよ!!」というものが結構多い。

それなのに何で褒めてるかというと、これはもう僕の悪い癖なんですけれども、道中が多少つまらなくても最終的にちゃんと納得出来れば100億点ぐらいあげちゃうんですよね。まずは「なんじゃこりゃ」系の作品も含めて前から順番に読むことをオススメします。

 

小学生の残酷さが懐かしい「遠い初恋」、オチと登場人物が秀逸な「黄泉路より」

短編の中でお気に入りなのは「遠い初恋」と「黄泉路より」。

「遠い初恋」は小学生の淡い恋話と見せかけてミステリー作家らしい捻りを利かせているのが良いです。作中で描かれているこの年代の子供たちのの悪意のない残酷さを少し懐かしく思いました。

「黄泉路より」は自殺サークルを舞台にした恋愛劇という設定もさることながら、その中で起きた事件の顛末も「なるほど」と唸らされます。この短編には歌野小説によく出てくる『早口で自分勝手なことをまくしたてる気持ち悪いオタク』が登場するのもポイントが高い。作中に大きなサプライズを用意してくれるだけでなく、「こんな人いそうだよね」と人間をデフォルメして描写する能力が高いのも僕が歌野晶午という作家を好きな理由です。

 

正直言って、まあまあ好みが別れる小説だと思うのですが、僕と同じような「ミステリーは雰囲気とサプライズが全てだ!!」派の人には自信を持って勧められる小説です。よしなに。

 

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