ちょっと前までAmazonにあったのに、今は取り扱ってないみたいです。残念。
著者について
碧星タケルという人です。秘拳伝キラという漫画の原作をやっていたそうなんですけれども、詳しいことはあまり分からないです。
表紙絵はうるし原智志さん。こっちは世代によっては聞いたことあるんじゃないでしょうか。
前の巻の感想記事はこちら。
概要
世界各地で謎の爆破事件と格闘家の失踪事件で頻発していた。ついに、シャドルーの世界征服計画の最終段階が始まったのだ。それを阻止するために世界中の格闘家がシャドルーの本拠地を目指す。そして、その中には春麗、キャミィ、ガイル、そしてリュウの姿があった。スト2戦士VSベガの大死闘の行方は…。大人気の「スト2 SAGA」衝撃の完結編。
Amazonより引用
感想
前作でロクにゲームキャラを出していないことを反省したのか、別の事情があるのかは定かではないのですが、スト2キャラがちゃんとたくさん出ます。
たくさん出るんですけれども、まあまあ死にます。
絶版本になってるものにネタバレも何も無いと思うので書いてしまいますが、前作の主人公格だったフェイロンはベガにヘッドプレスでサイコパワーを脳天に流された挙句に戦いの舞台となった富士山ごと爆発させられて死にますし、キャミィはベガの影響で調子が悪いところを豪鬼の波動拳を受けて一発で死亡しています。
設定資料が少ない中で、キャラクター達の闘う動機を本気で考察していった結果、どうしてもストリートファイターのキャラの命を奪わざるを得なかったんだと僕は思います。
作者の説明力の高さも健在で、ダルシムの身体が伸びる仕組みを可能な限り科学的に説明しようとしてるシーンは今読んでも結構読みごたえがあります。
ダルシムはただ立っているように見えるが、手足を幾分たわめて立っている。見た目より身長が高そうだし、手足が異常に長い男だ。
立ち姿から人を騙すとは、食えない坊主だった。
が、このからくりはこれだけではなかった。
打つ瞬間の関節と靭帯に秘密がある。
医学的に言えば、おそらくこれは「随意性脱臼」に類似するものであろう。
忍者の縄抜けの術は、この随意性脱臼を利用して肩関節を外すことで可能だと考えられている。
(中略)
だが、科学的に解説出来るのもここまでだ。
どう鍛えたところで、突き蹴りが10cmも20cmも伸びたように見えるとは考えられない。
その上、彼にはまだ余裕がありそうだった。彼の手足がどこまで伸びるのか、誰にも断言できないのだ。
もはやダルシムの体技はヨガの神秘で片付けるしかないのかもしれなかった。
ダルシムのニュートラルポーズにもそれっぽい理屈を付けて、一応科学的な解説を試みてるのがすごく良いです。
まあ、最終的には『ヨガの神秘』で片付けられるんですけれども。
前回も書きましたけどドットで描かれたキャラクターのモーションに、こうやってもっともらしい説明が付けられると、本当にそのキャラが生きてるみたいに感じるんですよね。
ちなみにこの小説では本田の隈取りにも理屈は付いていて、あの隈取は『神をその身に口寄せした証として、顔に浮かび上がるもの』とされています。
相撲は元々神道由来の宗教的儀式です。力士の中でも真の相撲の姿を伝える力士はその身体を依り代にすることで神を口寄せして、常人以上の力を発揮できるのです。
あの馬鹿みたいなスーパー頭突きも常人ならざる脚力によって生み出された最強の突進技としてシリアスに描写されています。
本田が唯一神道の真言呪文を唱えて神を降ろすシーンはこの小説の中でも屈指の名シーンなのですが、本家ストリートファイターでは顔の隈取は本田が相撲を『わぁるどわいど』にするために目立つように顔にペイントしてるだけと聞いてガッカリしました。
本当に良い小説だから電書化してくれーい。
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