アリプロのこれまでの曲の中から食をテーマにしたものを集めたコンセプトアルバム。過去曲8曲+書き下ろし新曲5曲。全13曲。
よくもまあ、食の曲だけでここまでバリエーション豊かな物が集まったなという感じです。アリプロらしい個性的な曲が収録されているので、アリプロ入門編としては一番オススメ。どれか一曲はお気に入りが見つかるでしょう。ちなみに二番目の入門編オススメは「血と蜜~Anthology of Gothic Lolita & Horror」
目次
1.毒味役
歌詞タイトルはピーターエルブリングの毒味役から来ているそうです。いつか読んでみたいっすな。
どことなく快楽のススメの『陸と海と空と』に似ていると思ったけれども、聞き比べると別にそうでもなかったです。最近のアリプロのアルバムのオープニングナンバーらしいというか、「何か黒アリ曲ください」と言うとこれが出てきそうというか。
飯の曲かと思いきや、「生きることは毒を喰らうことだ」という内容なので微妙に「食」というコンセプトから外れてるような。歌詞の「生きることと死は隣り合わせ」といった表裏一体のテーマは月蝕グランギニョルを思い起こさせます。
2.人生美味礼讃
僕の世代だとネウロのMADで聞いたことある人も多いんじゃないでしょうか。何か過激なファンに「ネウロの曲」って言うと「にわか死ね!!」って怒られるみたいんですけれども、僕は10年以上ちゃんとファンやったうえで「ネウロの曲」って言ってるので怒られないと思います。
友達がカラオケでこの曲を歌っていたのを聞いたのが僕とアリプロの出会いでした。自分が今まで聞いてきた曲と一線を画す衝撃的な歌詞とメロディ。この曲をアホのように聞きまくった僕はアリプロにハマり、人と話題が合わなくなり、友達の少ない青春時代を送ることになったわけですが。
この曲は『正気を保ちながら気が狂っている』という表現がぴったりだと思うんですよね。人の本性を抉るような歌詞を、ネジがぶっ壊れてるような明るい調子で歌い上げてるのがとても不気味で、とても気持ちがいいです。
3.恋する和牛
10年前なら電波ソングとか言われてそう。
肉を食うことへの欲求と葛藤を描きながら最終的に「まあいいや肉食おうぜ!!」ってなる歌詞が馬鹿っぽくていいです。でも、肉を食べるってこういうことですよね。
それにしてもアリプロの曲で「おならとげっぷ」なんて歌詞が出てくるなんてねえ。公式プロフィールでも文学的な歌詞を売りにしてるのに。一発ネタとしては面白いけれども同じ路線の曲はもういいかな……
4.昭和B級下手喰い道
メロディの緊張感とは相反してまさかの昭和ノスタルジック曲。こういうテーマの曲で『ジャン・バルジャン』とか平気で出してくるのは流石。僕は平成生まれなので1番の歌詞の駄菓子部分には特に共感が無いのですが、2番のおっさんが暖簾のかかった店で焼肉やりながら晩酌やってる部分には深い共感を覚えます。
最後は身体への害悪を気にせずに美味いものなら何でも食えた時代を懐かしむような内容の歌詞になってるんですけれども、もうその頃には戻れないんですよねえ。
5.茸狂乱美味礼讃
Psychedelic Insanityはディレッタントを大きく意識したアルバムだったように思うのですが、人生美味礼讃(曲)の続編は流行世界のアルバムが出るまでは無かったんですよね。
命がけで茸食ってるのに最後までどこか楽しげなのが、いかにも好事家、というか物好き変態集団っぽくて好きです。
6.狩猟令嬢ジビエ日誌
イマ風にしたら、狩りガール野外料理ブログ、ってとこでしょうかしら。
とは公式ブログのアリカ姐さんのコメント。
美味礼讃シリーズとはされていますが、1曲目の人生美味礼讃、2曲目の茸狂乱美味礼讃と比べると大分まともな食育ソングです。メロディは一番この曲が暗いんですけれどもね笑
7.喰らう女
ストレートなロック曲。今は亡きアリカさんの公式サイト、蜜薔薇翠星館でヤプーズの『肉屋のように』が好きだと書いていたのをはっきりと覚えています。喰らう女はアリプロ版の『肉屋のように』だそうです。
この感想を書く前は「こんなのアリプロでやる意味ないじゃん」と悪口書く気満々だったんですけれども、改めて聞いたらこれも全然ありですね。歌詞はPsychedelic Insanityの『欲望』の系譜だと思います。
8.お毒味LADY
この曲別に『食』をテーマにしてなくない!?と思うのですが、公式がこの曲を『食」というならそうなのでしょう。アリカさんもどこかで言っていたと思うのですが、やはりこの頃の曲はキレッキレですね。
気だるげな曲調から一転、とてつもない疾走感で禁忌を踏み抜いていくような感覚がとても好きで、当時高校生だった僕の厨二病を加速させた罪深い曲です。『刺して刺して~そうよまだ柔らかいうちに』の部分の後ろで聞こえる踏切の警笛のような音がとてもツボなんですけれども分かる人いますかね。
この曲はゲイ受けがいいということをアリプロのインタビューで初めて知ったのですがその理由はよく分かりませんでした。誰か解説してください。
9.恋愛分子ガストロノミー
聞き慣れないイントネーションとリズムで構成されたAメロはまるで異国の言葉のよう。現時点で脳内再生されている率NO1の曲です。歌詞の意味全然分かんないんですけれども、メロディが面白くて好きです。
10.桃色天国
「つぅいばむちぇりぃぃあまいためいーきで」
カップリング曲だった暗黒天国がだいぶ激しかったんで(多分歌詞もメロディもアリプロで一番激しい)、その反動みたいな感じでベタ甘の曲なんですよね桃色天国。たまに口ずさみたくなります。
11.Maison de Bonbonnière
これFantasiaの感想でも書いた気がするんですけれども、冒頭の和風で勇ましい雰囲気のまま最後まで行ってほしかったですね笑
どっかですっごい転調して最初の勇ましい雰囲気に戻るのかと思ったら、最後までスイーツ全開っていう。
桃色天国はちょっと幼児っぽさ(小さい子でも楽しめるという意味で)があるけれども、この曲は小6向けという感じ。歌詞がほんのちょっとだけダークなのが良いですね。
12.或る修道士の告解
芸術変態論の中だとそこまで印象に残る曲では無かったんですけれども、人生美味礼讃のアルバムにまとめると異彩を放ちますね。お菓子曲の後に放り込まれてるからってのもあるのかな。スイーツソングで蕩けた脳みそに活を入れるようなアルコール度数高めの一曲。
13.La Fée Verte〜アブサニストによる音楽的試み
La Fée Verteは緑の妖精という意味のようです。階段のような音程のメロディが面白いです。まるで讃美歌のような曲なんですけれども、これアブサンっていう度の強いお酒を飲んで妖精を見ようとしてる芸術家の曲らしいですね。アル中……
アブサンについてはこのサイトが詳しいです。
美味礼讃アルバムのラストに自滅寸前まで酒飲んで幻覚を見る曲というのは、非常にアリプロらしいと思いました。
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