最初に言ってしまうとタイトルがよく分からないと思いました。そりゃ自分もプレイヤーの端くれなので、今活躍しているeスポーツ選手の中に高学歴プレイヤーがいることは知ってますけれども。
本の冒頭で、スマブラのaMSa選手、abadango選手、shogun選手は学歴が高く、ストVのときど選手は東大卒で、LOLの学生大会は東大卒が優勝したいうことを例に挙げて「私の知っている限りでは、ゲームをやりまくっていたのに勉強が出来たと言う人がたくさんいる」と書いているのですが、それは筆者の肌感覚でそうなだけで実際に統計取ったわけじゃないですよね???
というツッコミに備えてなのか、2D格ゲーの代名詞たるウメハラが高卒であることにも触れながら、そういう人たちも頭の回転が速い、緻密な思考力を備えているという意味で「賢い人」であると本の中でフォローは入っています。別に「ゲームが強い=勉強が出来る」ということを主張したいわけじゃないようです。
そうすると、あたかも結果を出してるeスポーツ選手に高学歴が多いように誤解させるような本のタイトル(少なくとも筆者の肌感覚以外の指標はこの本の中には存在しない)はいかがなものかと思います。読んでいくと分かるのですが、どうもこの本の真の趣旨は『ゲームをやれば頭が悪くなるという迷信を高学歴ゲーマーや医者へのインタビューを通じて取り払う』というもののようです。どうにもインパクト重視で本のタイトルを決めたような印象です。
ちなみに筆者のすいのこ氏も”勉強とゲームの両立”を達成したゲーマーとのことで、スマブラX時代は鹿児島大学で焼酎の研究をする傍ら、東京までオフ対戦に行ったり、海外大会に挑戦して好成績を残していって、今では専業プロゲーマーとして活躍しているそうです。
そんな筆者は様々なトッププレイヤーと交流している中で、彼らに共通する要素として以下の3つが浮かんだようです。
①自分にとって何が課題かを見付け出すことができる
②見付けた課題を解決する方法を的確に選択できる
③異常なまでの負けず嫌い
すいのこ. eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか~トッププロゲーマーの「賢くなる力」~(小学館新書) (Kindle の位置No.312-314). 株式会社小学館. Kindle 版.
これらの要素はゲームに限った話ではなく、勉強にも必要な要素なので、ゲームの上手い人はきっと興味さえ向けば勉強も出来ると本の中で主張しています。
これらの要素を持つ人が、そのエネルギーを「勉強」に向けていれば、 有名大学に進学するなどの結果を残せているように感じる。「学校での成績が良くなかった」「勉強に興味が向かなかった」という人も、もし勉強 に熱量を注いでいれば好成績をあげていた ──そんなポテンシャルを持っ ている人ばかりのように感じる。
すいのこ. eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか~トッププロゲーマーの「賢くなる力」~(小学館新書) (Kindle の位置No.314-317). 株式会社小学館. Kindle 版.
まあ、僕は特にそうは思わないんですけれども。
たとえばチェスを学んだところで合理的な判断が増すといことは無いみたいです。僕もリンク先のこと以上は知らないのですが「あいつはゲームが上手いから、本気を出せば勉強も同じぐらい出来るはずだ」という考え方は特にこれといった根拠が無いんですよね。格闘ゲームの中だけでも『あのタイトルは強いけど、あのタイトルは普通』みたいなことがよくあるのに、本当に勉強とゲームを同一視していいかどうか僕には分かんないです。
とか思ってたら、本の中でインタビューされていたときどさんが
「大学院に進学した時、試験の点数が足りずにそれまで所属していた研究室から外されてしまった。学部生の頃は好きな分野の研究だったから身が入ったんですが、大学院では全く興味のない未知の分野に切り込まなければならなくなったんです」
すいのこ. eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか~トッププロゲーマーの「賢くなる力」~(小学館新書) (Kindle の位置No.343-345). 株式会社小学館. Kindle 版.
と勉強で失敗したエピソードを語っていて、やっぱ勉強とゲームって別物だよなと思いました。
ときどさんのほかに、ネフライトさんというフォートナイトのプロにも筆者は話を伺っているのですが、
その不安定な環境で生きようと決めたプロゲーマーは、実際に自分がこれまで接してき たなかでいえば、皆例外なく負けず嫌いだったり、プライドが高かったりといった要素 を持っていた。だがネフライトは全く違う。細身のごく普通の好青年は、よく笑う。
すいのこ. eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか~トッププロゲーマーの「賢くなる力」~(小学館新書) (Kindle の位置No.627-629). 株式会社小学館. Kindle 版.
と地の文で書いてて、どうやらネフライトさんには ”③異常なまでの負けず嫌い”の要素が無いようでした。さっき書いてたトッププレイヤーに共通する3つの要素とは何だったんでしょうね。
あと、最後まで読んだのですが、帯に書いてある「勝負脳」についての記述が特に見当たらなくてすごくもやっとしてます。読み違えてたらごめんなさい。
自分が格ゲー以外の競技ゲームのことを知らないのもあって、フォートナイトのプロやシャドバのプロのインタビュー部分はとても興味深く読めたのですが、どうにも筆者がゲームへの誤解を解きたい思いが強すぎて結論ありきで語っている印象です。
そこまで意地悪な読み方をする気は無かったんですけれどもねー。うーん。
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