私はゲーム開発者のインタビューを読むのが大好きなんで、知ってるタイトルのものなら率先して読んでいくんですけれども、スマブラの桜井さんのインタビューは格別に面白いんですよ。たとえばこのインタビューでスマブラの面白さを桜井さんが自分の言葉で語っています。こういう話を知るだけでゲームを見る目が少し変わっちゃいますよね。
桜井氏:
意外ですけど、ゲームをしていて自分が「ワハハ」と笑う瞬間って、やられたときだったりするんですよね(笑)。ずっと緊張しながらやっていて、その緊張が解けた瞬間がおもしろいという。──格闘ゲームとはそこが真逆ですね。
桜井氏:
だから “KO”と派手に表示されるのはいいとして、相手が力尽きて痛々しく倒れるよりは、むしろそこをバカバカしいほど派手にしたほうがいいと思っているんですよね。たとえば、「ボコーン!」と爆発しちゃうとか(笑)。──それはまさしく『スマブラ』ですね(笑)。
桜井氏:
やられた結果がネガティブな方向ではなくて、ポジティブな方向に向かう。演出だけじゃなく、「バカバカしいやられかたをした」というようなことも込みで、総合的に楽しい。緊張が解けた瞬間にワハハと笑ってすぐにつぎに行く、というのがベストかなあと思うんです。
ということで、桜井さんのコラムを買いました。ファミ通で連載しているコラムの中からゲーム制作に絞ってまとめた本です。3DSのローンチタイトルのパルテナの鏡と前作のスマブラforの制作についての話が中心です。
- 作者: 桜井政博
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン
- 発売日: 2015/06/25
- メディア: 単行本
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スマブラDXがオタク向けすぎて少し後悔してる話とか、スマブラのバランス調整の話とか、面白い話がいっぱいあるんですけれども、個人的に刺さったのはVol.429の『お昼休みとカジュアルプレイ』というコラム。この回は対戦ゲームが面白い理由を桜井さんが論理的に説明しているのですが読んでいて何回も「なるほど!!」と膝を打ちました。一部抜粋していきます。
ゲームはやれることが少ないほど、腕前の差はつきにくいもの。たとえば移動なし、行動は単発キックのみとなったら、純然とボタンを叩くだけ。腕前なんて関係ナシ。ただ、これに移動の要素がつくだけでも、間合いの要素で腕の善し悪しが生まれることでしょう。
で、やれることが増えるたびに、勝敗はより確定的なものになっていきます。ジャンプ、ガード、投げ、確定コンボと。
私がメインで遊んでいるスト5は人との差がめちゃくちゃ出にくいゲームなんですけど、その理由はここにあったんですね。スト5はシステムがシンプルでやれることが少ないから、腕前だけで勝負がつきにくいわけです。
それでも大会上位のメンツは大体同じ顔ぶれなんで、腕の差を決める要素はまだまだ多いんでしょうけれども。
もうひとつ、面白かった部分を抜粋します。同じコラムの〆の文章です。
私がこのコラムを読み終わる少し前にサードのクーペレーションカップが行われていました。それを見終わったゲーム仲間のひとり(その人はサードはいわゆる”動画勢”でプレイヤーではありません)が「サードの大会は理由はわからないけれども魅入ってしまう」と言っていました。その理由は桜井さんのコラムに書いてました。
矛盾しますが、ゲームは努力した成果が出ないとおもしろくありません。努力を重ね、さまざまな戦略を練って勝利するというのはまた格別なものがあるわけで。プレイヤーの力とワザを裏切らないという意味で、ズルはできない。だけど相反して、結果が見えている試合ほどつまらないものもないわけです。攻防の変化や、最後に大逆転が起こる可能性があってこそ盛り上がるわけで。
私の中のサードのイメージとぴったり合致しました。ここまで感覚を言葉に出来るのはお見事としか言いようがありません。
桜井さんの分析が面白すぎるので別のコラムも買ってみることに決めました。
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