曲構成や音使いの奇抜さに拍車がかかっています。
ただでさえJ-POPとは程遠い存在だったのに完全に一般人バイバイアルバムになったように感じました。
ある人によってはヒラサワの曲がコア化としたと言って喜ぶかもしれませんが、ある人にとってはヒラサワの曲がカルト化したように感じるかもしれません。
実際、意図的に従来の手法とは違う音楽の組み方をしているらしいです。
僕がヒラサワ音楽に求めるのはJ-POPに存在しえない感性なので、この方向性の進化は大いに歓迎します。
※追記:歌詞に考察はあくまで個人の解釈です。ヒラサワの歌詞は奥行きが魅力なので、皆さんでも色々考えてみてください。
目次
01.BEACON
24曼荼羅ライブで先行披露されたうちの一曲。ハルディンホテルや夢の島思念公園の系譜の明るすぎて気持ち悪い系の曲です。転調で低めの声が入るせいで余計に不気味に聞こえます。
CDで聞いて最初に思ったのは「音が分厚い!!」なんですけれども、それが従来のヒラサワと比べて分厚いのか、ライブで聞いたときよりも分厚いのかは分かりません。ただ漠然と「音が分厚い!!」と思いました。
BEACONとはのろしや合図を意味する単語です。このアルバムでは全体を通して「自分の内なる正気の合図(BEACON)に耳を澄まし、新しい世界観への目覚め」を促しています。歌詞カードにも耳を澄ますヒラサワがいますしね。
この二つのムービーを作ったおかげで、世界の分断についてこんな言い方ができるようになる。
Beaconを見つけた人には2つの世界が見える。Beaconの世界とZconの世界。
Zconの世界に属する人はZconの世界しか見えない。
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2020年11月3日
ZconiteはZconに呼応して機能する。
Beaconが正しく人を導くために働く物なら、
Zconは人を誤った方向へと導く。
ゆえに「Z」、つまりアルファベットの最終に位置する文字で始まる。
人を最終的な隷属状態へと導くのがZconだ。
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2020年11月3日
BEACONが人に正しい世界観を見せるのに対して、ZCONITEは対の存在で人に悪しき世界観を見せるとヒラサワから解説があります。核Pで描写したビストロンとアンチビストロンの関係とほぼ同じですね。
この曲の歌詞でも新しい世界観の景色と忌まわしい世界観の景色、二つの世界の景色が交互に歌われています。
02.論理的同人の認知的別世界
冒頭のギターの音でジャングルベッドを思い出したのですが、実際に聞き比べてみると全く違うメロディであることに愕然としました。自分の耳腐ってる……。
曲の不安定さは中期のP-MODELのようであり、ダッシュダッシュダイダッシュ!!のコーラスは初期ソロのようであり、どことなく回=回も引きずっているような雰囲気もあります。1曲の中であまりに目まぐるしく曲調が変わるせいで、本当にこれが同じ曲なのかと再生中に何度も曲名を確認しました。
途中で挟まるナレーション部分は完全にツイッターのノリですね。転調の不自然さを強行突破するのに一役買っています。口調はAnotherGameの催眠音声のようです。
タイトルの論理的同人の「同人」とは同一人物という意味では無く、公式で出している英訳(The Cognitive Another World of the Logical Coterie)を参考にするところによると「同胞」という意味のようです。論理的で正しいはずのヒト科が認知の歪みによって別世界を見せられているという意味のタイトルでしょうか。最近のBSPでも認知の歪みと悪しき物語の話を語っていたはず(語っていなかったらごめんなさい)。
歌詞は歪んだ認知が見せる悪しき物語(眼の奥の脳で散る火花のオペラ、空論で日は昇り世界を照らす、幸いと災いが反転するパラダイス)からあなたが正気を奪取することで、正しい世界の認知を取り戻した、というようなもののようですね。
03.消えるTOPIA
\カコハタッタイマ/\イマハタッタイマ/\アスハタッタイマ/
インストゥルメンタルに無理やり歌詞を乗せたんじゃないかと疑いたくなるぐらい複雑なメロディ。転調の不自然さを強行突破しすぎていて前衛音楽みたいになってますね。最初に聞いたヒラサワがこの曲ならみんな絶対逃げると思います。3回ぐらい聞くとめっちゃポップに聞こえてくるんですけれども。
どうでもいいですけれども\ナーイヒーハー/って部分はトリビアの泉の\トーリービーアー/と同じメロディです。
TOPIAはラテン語で「郷」を意味するそうです。
ホログラムという単語にホログラムを登る男を感じたり、ソケットやロケットという単語にENOLAを感じたりしますが、歌詞の意味は他の曲と同じく「目覚めろ!!」ですかね。自分を取り巻く生きづらさは今の世界から離れる(死を覚悟する)だけで簡単に消失する的な感じ。
04.転倒する男
冒頭のギターで大阪の会然TREKライブの狙撃手のアレンジを思い出しました。途中で入る管弦楽器は同じく大阪の会然TREKライブのDUNEを思い出しました。Aメロの盛り上がらなさはどことなく和の雰囲気(あるいは民謡のような?)を感じましたがそれは気のせいかもしれません。バカコーラス好きなのでこの曲も好きです。
歌詞の内容は「転倒する男」に対してヒラサワが強く鼓舞する歌詞ですね。大きく分けるとこれも「目覚めろ!!」系の曲っぽいです。
05.燃える花の隊列
ハッ!!という出だしにクロノトリガーのガルディア王国千年祭のBGMがダブりました。
この曲も例によって転調が激しすぎます。構成が難解すぎて付いていけそうにないんですけれども、逆にそれが「何度も聞いてみたい」と思わせる変な中毒性を生み出します。音楽ジャンルに詳しくはないんですけれども、こういうのを「プログレっぽい」って言うんですよね?
歌詞は相変わらず「目覚めろ!!」なんですけれども、他の曲と比べて「生存の火を焚け」「火を咲いて歌え」とヒトの力強さを感じさせる単語が多くて好印象。後ろで鳴り続ける低音やバカコーラスが言葉に更なる力強さを与えてくれています。この力強さはオーロラの歌詞にも似たものを感じます。
06.LANDING
アリプロのオリジナルアルバムに収録されてそうな曲みたいだと思いました。弦の音をフューチャーしてるからそう聞こえるのかな。アリプロは大好きなのでもちろんこの曲もめちゃくちゃ好き。
歌詞は相変わらず「目覚めろ!!」系と見せかけて微妙にニュアンスが違いますね。「目覚めてから新しい世界に着地する瞬間」を描写してるように見えます。使う単語が目新しくないのに新しい世界観を示しているのが個人的に高ポイント。
07.COLD SONG
別記事で感想と考察書きました。
他人の曲なのにちゃんとヒラサワしてる。
別記事で「般若心経みたいな曲」って書いたんですけれども、制作ツイートを漁ったら本当に般若心境を参考にしたって書いてて笑いました。僕の耳も捨てたもんじゃないですね。
一度歌い出したら歌い終わるまで句読点が無い歌詞。
明確に分かっていることは、一音ずつに一文字を当てはめてゆくと、めちゃカッコ悪い。
般若心経でさえ1音に2音節を当てる場所があるのでカッコよく仕上がっている。
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2020年12月12日
あ、般若般若心経。。。。
つい自分で回答出してしまいました。
つい。
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2020年12月12日
08.幽霊列車
アカペラのスキャットからスタート。
\アンタンタールーストーリー/は子供が悪い子を囃し立てるときに口ずさむようなメロディだと思いました。誰にも共感してもらえないと思いますが。
ギターの音が切ない?ムーディーな?リズムを刻んでいて、今までのヒラサワに無い音の出し方をしています。
歌詞は過去のアルバムで歌っていたものとは一転、この曲では「物語」を敵視しています。もちろん物語には「良い物語」と「悪い物語」があるというだけの話なので特に矛盾はしてなさそう。
その悪しき物語からヒトを幽霊列車が救い出すという内容でしょうかね。
物語については「無」の本の感想で書いた二の矢、三の矢の考え方で触れた「勝手に起動されるストーリー」という考え方が近いんじゃないかと思います。
09.TIMELINEの終わり
別記事で感想と考察書きました。
この曲をエンディングにしないのは意外ですね。
10.ZCONITE
1分ほどの短いインストゥルメンタル。ご本人の解説よりBEACONとZCONITEは対の存在だそうですね。歌詞のように聞こえる言葉は例によって逆再生でしょうか。
BEACONの声に気付いた人からすると、ZCONITEに侵された世界はこんなにも禍々しく聞こえるということでしょう。
11.記憶のBEACON
今まではエンディング曲といえば余韻を残すような曲が多く採用されていたのですが、今回のアルバムのエンディングは疾走感溢れる元気の出る曲です。このアルバムから得たエネルギーを現実世界に持ち帰ってほしいということでしょうか。失礼なのは重々承知なんですけれどもドリフのテーマソングのような勢いの良いコーラスにちょっと笑いました。
自らの内側にあるBEACONの呼び声に気付いたあなたが、自らのための人生をようやく歩き始めるという希望の歌でしょうか。
コメント