待望の核P-MODELの最新アルバムが出たので感想を垂れ流して書いていこうと思います。
目次
1.回=回
インストロメンタル。ギュンギュンとしたギター音が曲の中心になってて今までのヒラサワらしくない。この曲に限らず、回=回はギターが多用されています。
同じようなメロディがループしている、いや回帰し続けていると言った方がこのアルバムっぽいか?『回=回』の数式が示すように、永久に同じところを彷徨っているような気分になりました。
2.遮眼大師
前にも感想書いてるので手短に。
改めて聞くと世界観がBig Brotherっぽい。続編だったりしてね。
Big Brotherの『連呼せよ、さあ思慮は今罪と知るべし』という歌詞と、遮眼大師の『周囲皆窮鼠』って何か関連付けて考えられそうじゃないです?w
3.OPUS
アニメ映画のテーマソングとして作られたというこの曲。
映画のテーマだからといって、ロタティオンや白虎野の娘のような情緒感を期待してはいけない。
それは時に冷たく、得体のしれない出来事に対する淡い不安感とある種の確信が入り混じる感覚も漂っている。
さあ、すれ違い
さあ、ジェネシスを— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2018年4月15日
ヒラサワ御大も仰有っているが、この曲に情緒感とか無い。最後まで6割ぐらいの盛り上がりで進行するうえに、バックの音の主張が激しくて曲全体が混沌としている。調子外れのギターがカオスに拍車を掛ける。この曲が似合うアニメってどんなだろう。見たかったな夢みる機械。
歌詞には『メタ』や『VR』といった仮想世界を思わせる単語がチラホラと。
『星を思慮で生み さあ、息を吐き さあ、ジェネシスを』という歌詞もあるから、想像力で世界を作り出すというのがテーマだと思う。ちなみにジェネシスは”創世記”、OPUSは”作品”という意味らしい。
この曲は盛り上がらなさが逆に癖になる。
4.TRAVELATOR
ポップで可愛いながらも、怪しげなイントロ。この曲も盛り上がるポイントがめっちゃ分かりにくい。ほとんど平坦。テクノお経。
Oh トラベレーター
未来を向くヒューマンレイス
Oh 出られず
失笑ダーウィン 失笑ダーウィン
トラベレーターは動く歩道のこと。歌詞中のヒューマンレイスは多分Human Raceのことで人種という意味。ダーウィンは進化論の比喩かな。
ベルトコンベア式に決められた未来に運ばれていくお前らの姿をダーウィンが見たら「進化する気ないじゃん」って失笑するぜ?という意味だと思う。
この世界では先を見据えること、大きすぎる夢を持つこと、知りすぎることはタブーなのである。近年のヒラサワお馴染みの「お前ら騙されてる」系の歌詞。
5.亜呼吸ユリア
バックの楽器が増えるところでテンションが上がってくる。使ってる音自体は怪しいくせに、曲の印象は綺麗で良い。
亜呼吸ユリアの英訳がOTHER BREATHING YURIAなので、他人と息遣いが違うユリアという人を描写した歌詞なのでしょう。
『何万回も消える「今」を飾りに』ユリアは来るらしいのですが、”消える今”とは『生まれる光に息も凍る 黄金の刹那』でもあるらしい。息なき刹那を生きるユリアだから、他人と呼吸が違うのかもしれない。
話は少し逸れますが、瞑想ってあるじゃないですか。あれは呼吸に集中することで『刹那』に意識を向ける訓練なんですよ。『刹那』を意識することで今をより良く生きることが出来る、的な。
ここまで考えといてアレなんですけど、歌詞の単語を都合よく無視して、ユリアちゃんを『今』とか『一瞬』を擬人化したものだと思うと厨ニっぽくて可愛いなと思いました。
6.無頭騎士の伝言
イントロがコミカル。もっとも、この曲が似合うコメディは世界のどこに行っても見つからなさそうですが。
『置き去れ無数の朝を蹴散らして』って唄ってるときのヒラサワがご機嫌そうで僕は嬉しいです。『無数』って部分の『うぅぅ』ってところの音の上がり方が気持ちいい。
『隠喩の斬首刑』で生まれたのが『無頭騎士』と考えるのが妥当なんだろうな。世間から植え付けられた常識との別れの儀式が『斬首刑』とか?そして無頭騎士は、鋭敏に時に割かれ続ける『キミ』を探すらしい。『キミ』は騎士自身の失われた人間性とか考えると物語として面白いかな。
首ごと処刑されることで常識を捨てることが出来た『私』が、本来あるべき理想の自分(=キミ)を求めて無限に彷徨い続けるとかどうでしょう?
7.ECHO-233
それは出会いがしらに幻聴を生み出す悪いヤツだ。
最初の音1、次の音2、この二つが1,2、1,2と繰り返されて3の音に移行する。
人の耳は1は2より高い音と認知する。念を押すように二回繰り返される。どう聞いても1は2
より高い。— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2018年9月2日
本当は、1は2よりはるかに低い。
(これはイントロのギターの話題だ)
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2018年9月2日
音のニュアンスや周囲の音との連結において経験したことが無いあり得ない関係を聞かされるので脳はそれを経験の範疇にある音の連関に置き換えて認知するためと思われる。
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2018年9月2日
以上、ヒラサワのイントロ解説。でも、僕は音痴だからこの曲の音楽的面白みが全然わかりませんでした。
この歌詞はあんま考えるところはなさそうなんですけれども、『キミ』は化石よりも古い時代にいるらしいから、個人というか人間の本質とかアーキタイプと呼ばれるようなもののことを指しているのかな。
8.幽霊飛行機
爽やか…なのかな?w
この曲の感想メモには『ダメな疾走感』って書いてました。Aメロ?のテンションの微妙に上がりきらない感じがそう思わせたんでしょうw
かつては論理空軍という曲で『UNDOで寸分前の過去を帳消す飛行機で!』とロジックを歌にしていた人が、今では『飛べ 科学の仇 幽霊飛行機』ですってよ。いや、ブレてはいないと思うけどねw
歌詞の『正気を焚いて』っていう単語には爆笑しました。正気の人間はわざわざ『正気』って言わないんだよなあ……。
科学、論理に敵対する存在としての幽霊飛行機なんでしょうね。ヒラサワの敵はいつだって「ありえない」「バカバカしい」という言葉だったはずです。それは今までの曲やツイートの中で繰り返し言われていたことです。
9.PLANET-HOME
歌詞カード無しで聞いたときは「ヨーデルかな?」と思った部分が実は歌詞の一部でたまげた。
単語から想起してるだけなのか分からないんですけれども、どこか点呼する惑星っぽい気がする。
『手をかざし~』のところはもしかしたらラップなのかな……いや、音楽ジャンルのこと全然わからないんだけれども、リズムに気持ちよさがなんとなくラップぽい。
『(人間として生きるために)かまわずなくせ』というのもヒラサワの歌で繰り返し言われてることですね。ホログラムを登る男とかモロにそういう曲ですし。
10.HUMAN-LE
テクノ民謡?この曲で盆踊り出来そう。
HUMAN-LEというのはヒラサワの造語?曲のテーマ的に『ヒト科』という意味かな?
『聖なれよ囚われのヒト科よ』というフレーズが凄く好きです。
この曲はヒラサワ語で書かれた「そのままでいいから元気出して」って意味だと解釈しました。『気付くならいとも容易いと』というフレーズに、「好きにすれば?」という優しい放置のニュアンスを感じました。
長くなったので、回=回の歌詞以外の考察っぽい何かの記事は次の記事に回します。
コメント
他の人の考察を巡って楽しんでおります。
失笑ダーウィンの意味は成程~、と納得させられました。
他にも「成程、そういう感じ方も…」と考えさせられました。
アルバム全体を通して見た感想は自分も大体同じって感じでした。
平沢さんの曲の根幹である「全き人格の回復」に満ちた優しいアルバムだと思いました。
あと、自分はHUMAN-LEを初めて聴いたときから民謡っぽいとか昔地元の盆踊りで聴いたようなすごく懐かしい気分に浸っていたのですが、民謡っぽさを感じる人が他にもいて嬉しくなりましたよ。
正解かどうかは分からないですけど考えることが楽しいです。色んな解釈を許してくれる懐の広さがヒラサワの曲の魅力だと思います。
HUMAN-LEは確かヒラサワが沖縄行ってたから、それの影響入ってんのかな?と少し思いました。