ネタバレありで各ルートの感想です。ちなみに旧盤はやってません。メルブラ由来で大筋は知ってるけれども。
前回の記事はこちら
目次
共通ルート
冒頭
起動した瞬間、間髪入れずにオサレな演出で奈須ポエムが流れます。
気絶するかと思いました。
画面に表示されている文章と読み上げる音声が違う演出は、文中でルビを多用する奈須きのこならではのアイディアですね。
十七分割
月姫といえば十七分割。
十七分割といえばメルブラの超必殺技。
あれぐらいのものを想像してたのに、スチル絵でとんでもないものを見せられました。
志貴の抱える罪悪感をプレイヤーに共感させるためとはいえグロい、グロすぎる。
電車の中で遊ばなくて心底良かった。
というかメルブラの十七分割がライト過ぎ?
ヴローヴ戦
黒豹とか出てくるのを見て「はいはいネロカオスネロカオス」と思ってたら知らんイケメン出てきましたね。
メルブラでヴローヴの情報が解禁されたときは「え…いいんですか……?」と、逆にユーザー側が気を遣う感じになってたのは面白かったです。
ここで初めての本格的なバトルなんですけれども、やっぱり奈須きのこの戦闘描写は気持ち良い。
文章のリズムを重視しすぎてて、何をやっているのかよく読んでも分からないときもありますが……
アルクェイドルート
ヴローヴ戦2
「ショウタイムだ、吸血鬼!」
ヴローヴがまさかの変身持ちという。
炎属性+氷属性の組み合わせは別に珍しくないんですけれども、そこに至るまでの課程を面白く書けるのが奈須きのこですよね。
決着後に作者から「実はお前ら志貴が氷点下で動ける理由なんて考えもしなかっただろうけれども、実はアルクが守ってたんだぜ」みたいなネタバラシがあったけど、僕はずーっとそれを頭の片隅で気にしながら読んでました。
デート→吸血衝動まで
アルクェイドの欠点は、何でも合理性で考えてしまうこと。
合理性と感情(非合理性)のせめぎあいというのは月姫で奈須きのこが掲げている大テーマのひとつだと思います。
「手堅く80点を取るためにどうするか」を考えるのが合理性なので、120点を取ることができない。
アルクェイドは姿かたちこそ美女だけれども、本質的には吸血鬼を殺すために動いている”機能”。
”機能”だから合理性を重視する。
愛や友情、信念みたいな非合理的なエンジンで動くことが出来るのは人間だけで、そんなものは”機能”であるアルクェイドには分からない。
月姫とは、人間の営みが理解出来ないと言うアルクェイドが、機能(合理性)を乗り越える話であり、同時に生きることに対してどこか遠くで眺めているようだった志貴が愛という名の最強の非合理エンジンを手に入れるまでの話であると。
そういうことが示されたアルクルートの中核シーンでした。
ノエル&マーリオゥ
ノエルは序盤の思わせぶりな振る舞いから吸血鬼側の人間とばかり思ってたんですけれども、実は教会側の人間でしたね。
今にして思えば彼女のピークはアルクルートでちょい役として出ていた頃だったのかもしれません。
マーリオゥはアルクルート・シエルルートの両方で狂言回しのような役回りに徹していました。声優さんの演技が一番ハマっていたキャラだと思います。良いキャラなので次回作ではもっと深く掘り下げられてほしいです。
彼が不老不死の秘法を探っている理由は明らかにされていませんが、話を繋ぎ合わせると、ラウレンティス司祭が死なないけど老け続ける呪いにかかっていて、その呪いから解放するためですかね。
fateの間桐臓硯と同じような状態でしょうか。
ロアとの邂逅
ロアってやつがボスだったのかー(棒)
旧月姫は遊んでないけど、メルブラでそれは流石に知ってた。
志貴と四季の入れ替え
夏の回想の真相はちょっとした叙述トリックになっています。
志貴と四季の双子入れ替えも多分ミステリーから着想を得たネタですかね。
新本格ミステリーが奈須きのこのルーツになっていることは有名な話(ですよね?)
小説は字を読むという時間をとる厄介な過程があるのに対して、マンガはもう、一見して物語に引き込める。
そういうアドバンテージがマンガにはありますから、小説である以上、マンガの2倍は面白くないと意味がない。ということをずっと考えていたんです。
そういう風に思っていた時に、綾辻行人さんの「十角館の殺人」を偶然読んだんですよ。
すごいショックを受けまして。
「ああ、小説には小説でしかできない見せ方があるんだ」
と、後頭部をガーンと殴られたようなショックでしたね。
そこから新本格の世界に傾倒していきまして。
新本格の面白さと伝奇の面白さをなんとか一つにしたものを作りたい、と思い出したのが5〜6年前ですね。
ですので、影響を受けた作家さんとなると、菊地秀行さんと、頭のスイッチを切り替えてくれたということで綾辻行人さん。
あとはまあ、大御所と呼ばれる島田荘司先生。
この3人ははずせませんね。あと、京極夏彦さん
なんかすごい好きで。あの人は影響があるというよりはもう、
神様なんで(笑)好きでしょうがないという
話は少々逸れますが、綾辻行人の暗黒館の殺人は、奈須きのこがステータスをミステリーに全振りしたような作品で個人的にすごく好きな小説です。僕が最初に読んだミステリーだから過剰評価してる可能性もありますが。
何巻か忘れましたけど、奈須きのこがこの本の解説を書いています。興味があれば是非。
大好き――大好き、大好き、大好き!
月の光を背景に、飛び跳ねる影絵のアルクェイド。
兵器だった彼女が、生きる喜びを全身で表現しています。
個人的に、今回の月姫で一番好きなシーンです。
ロア戦2
ロアにとどめを刺しそこなったのに、アルクがそれを気付けないシーンが泣かせる。
泣かせるんだけれども、この間、ロアがずっと待ってくれていることに少し引っかかりました。
志貴がロアにバケモノ呼ばわりされるあたりの演出は神がかってましたね。
エンディング
アルクェイドは生き返ったものの、吸血衝動を抑えるために志貴の元を去ります。
全てが日常に戻ったものの、その日常の意味は物語の始まりとは少し違って……というベタだけど切ない終わり方でした。
総括
3ルートある中で一番好きなルートです。
物語が綺麗にまとまっていて、何よりやりすぎていない。
あと、ヒロインが一番守りたくなる。
アルクェイドには真ルートが存在することがインタビューで匂わされていますが、果たして、このまとまりと美しさを超えることが出来るのかと心配しています。
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