【読書感想】こんな場所が現代に存在するのかと、軽いカルチャーショックが……(ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活/國友公司)

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最近の西成は観光地化しているとか、昔より遥かに過ごしやすいと聞きます。

外国人観光客が激安の宿を求めてあいりん地区に出入りしているなんて話もあるそうです。

だから「ルポ西成」なんて言っても、そこまでショッキングな話が出てくることも無いだろうと思ってました。

 

甘かったです。

 

一目でシャブ中と分かるような人間がわんさか作中に登場します。

身分がすべて”自称”でしかないので、自己紹介がほとんど意味を為りません。

人の命が軽く、日雇いの現場作業は、いつ人死にが発生してもおかしくなさそうです。

労働環境としては最低なのに、生活保護は受け取りたくないというプライドがみんなに根付いていました。

 

同じ大阪の中で、価値観や常識がここまで歪んだ場所があるのかと驚きました。

 

 

 

 

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概要

国立の筑波大学を卒業したものの、就職することができなかった著者は、大阪西成区のあいりん地区に足を踏み入れた。
ヤクザ…、指名手配犯…、博打場…、生活保護…、マイナスイメージで語られることが多い、あいりん地区。ここで2カ月半の期間、生活をしてみると、どんな景色が見えてくるのか?
西成の住人と共に働き、笑い、涙した、78日間の体験ルポ。

 

Amazonより引用

 

人によっては不快な本、らしい

Amazonのレビューを覗くと「若者が面白半分で西成で過ごして、そこの住民を見下した書き方をしている」「あっさい」みたいな論調のものが真っ先に目に入ります。

この手の批判的なレビューは大体、読み終わった後に「確かにな……」と共感することが多いので、少し不安になっていましたが、実際読んでみたらとても面白かったです。

筆者のスタンスを「見下している」と捉える気持ちは分からなくもないのですが、自分には正気の人間が正気の反応を示しているように思えました。

「あっさい」という感想については、他のルポルタージュ物と比較しての感想なのでしょうか。

ルポタージュ物は読んだことが無いので、深い浅いはよくわからなかったです。ただただ面白かったように思います。

むしろ堅苦しい物を想像していたのに、思っていたより書き口がライトで読みやすかったです。

 

フーテン宮崎さんの悲哀

ドヤで働く人たちの中で、現場作業に不慣れな筆者に良くしてくれる「宮崎さん」という人物が現れます。

「宵越しの金は持たねえ」という、絵に描いたようなフーテンのおじさんです。

日雇いで稼いだ金は競馬競艇パチンコと食事にほとんど使い込んで、日銭がなくなったら西成にフラッと帰ってくるのです。

過去にはヤクザをやっていたり、フクシマで除染作業員を行っていたり、マグロ漁船に乗っていたこともあるそうです。

あまりにも滅茶苦茶すぎてドン引きの連続だったルポ西成の中で、アニメから出てきたような性格の宮崎さんに、僕は秘かに癒されていました。

しかし、宮崎さんはほんの掛け違いのような出来事で働き口を失ってしまい、西成の作業員たちが忌み嫌っていた生活保護を受けることになってしまいます。

作業員としてのドロップアウトです。

この本の最後では、生活保護によって労働から解放された宮崎さんが、日がな一日テレビしか見ることのない生活を続ける中で、生き甲斐を失っていく様が描かれています。

人が生きることについて、深く考えさせられた気がします。

 

カルチャーショック!!

もちろん、本の中で登場するのは宮崎さんだけではありません。

西成で日雇い仕事をしているくせに自分は証券会社で勤めていると何の意味が分からない嘘をついている男や、あいりんの生活保護受給者にブランド品を自慢しに来る終わってる女など、個性豊かという言葉に収まりきらないほどの人物が多く登場します。

これが西成という場所か……とカルチャーショックを受けるには十分すぎる本でした。

面白半分でハッテン場を見に行ったところは倫理的に少し残念に思ったのですが、それぐらいでこの本に低評価を付けるのはもったいないとも思います。

 


 

 

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