核P-MODELのファーストアルバム『ビストロン』はメディアやそれに追従する雰囲気を批判するために作られたアルバムであったと思うのですが、『гипноза』はもう少し希望のニュアンスが込められているように思います。
無料配信曲です。
ピーガーピーガー。冒頭のピープ音は催眠ショーの幕開けを知らせるブザーのよう。
人を威圧するような28人編成の馬鹿コーラス、激しい変調、間奏のギター。ヒラサワらしさてんこ盛りのオープニングナンバーです。
гипноза(ギプノーザ)とはロシア語で『催眠』を意味する言葉ですが、歌詞カードに掲載されているストーリーでは人々に幻覚を見せる悪しきナノマシンの名として使われています。
タイトルに敢えてロシア語を使う意味についてヒラサワは上坂すみれさんとの対談で「我々は隣の国であるロシアの言葉よりも遠く離れた国の母国語である英語の方が身近に感じてしまう。そこに何者かの意図があることに気付いてほしかった(要約)」と説明していました。
『既視的ムービー』『ロングランの永遠の絶景』は「マスメディア」や「常識」等の自分以外の他者が生み出した値観の押し付けを意味しているように思えます。
歌詞中の『カタストロフィ』は良い意味にでも悪い意味にでも取れますが、僕はгипнозаによってもたらされた価値観が大きく転換する様を指しているのだと考えています。
目次
それ行け!Halycon
画像はHYBRID PHONONの公式販促動画からスクショしました(https://youtu.be/f5Iafce3rdo)
後ろのスクリーンに映っているのがHalycon(ハリコン)の姿形です。
5曲目は核P-MODELがP-MODELのパロディーやってるような感じだ。感じられるならな。これに田中靖美のキーボードソロが入る。
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2013年7月31日
これより「それalycon」24人分のバカコーラスを捕獲開始と告知します。
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2013年8月31日
ポップな音が跳ね回る様子がどことなく『アンチビストロン』を彷彿とさせます。
Halyconの語源は不明ですが、アルバムのストーリー上ではгипнозаの見せる邪悪な幻影を打ち消すワクチン的な効力があるだけでなく、上手く作用すれば自己肯定感が溢れ出るという最強のナノマシンの名前として登場しています。
歌詞中の『カラのガスタンクから存在しないはずのカーボン臭がして天変地異の発生を騙る』『1000デシベルの訓戒詩で人にショックと憎悪を植え付ける宣伝カー』等の現象はгипнозаの仕業で、それらの『現象』『幻影』『学説』『宣伝』『統計』に対して立ち向かうHalyconを応援する感じの歌詞でしょうか。
ところで『催眠ショー』という言葉が歌詞中に出てきていますが、平沢進が悪い意味で『ショー』とか『詐欺』という言葉を使うときは、大体アメリカの911事件のことや戦争ビジネスのことを指します。
これからの歌詞考察のご参考までに。
しかも、アメリカでビルの爆破解体ショーやりやがった年にのんきに生まれて来たやつが居ると?
戻れ!!戻れ!戻れ!戻れ!
まだ早い!— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2017年11月13日
久々にカート・ヴォネガットの本を買った。まだ三分の一程度しか読んでいないが、「タイムクエイク」と題されたそのSFストーリーの中で、日本への原爆投下はショービジネスだと書かれている。事実上物理的にも対戦能力を無くし、アメリカに降服を申し出ていたにもかかわらずシカトされ「戦争を終わらせるため」という理由でご丁寧に二回も落とされたあの原爆のことだ。
時震 – Phantom Notes|平沢進 Susumu Hirasawa (P-MODEL) Official site
排時光
排時光のギターソロは右チャンネルがPEVO1号、左チャンネルがヒラサワ。
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2013年9月26日
荘厳さとカオスの混ざり合う曲です。ライブで間奏のギターのアレンジを聞くのを毎回楽しみにしてます。
Aメロの早口部分の意味は全部を正確には汲み取れないのですが、言わんとしてることはニュアンスとしてわかります。
「延命を!」と言いながら突進してくる緊急車は炎上して、永遠に続くと思われた絶頂期を銃弾で引き裂かれる。まさに万難。
そんな中で唯一信じられるのは、人自身が持つ可能性の輝きなのでしょう。 この可能性の輝きを排時光と呼ぶのだと僕は考えています。
ところで平沢進のことを「努力不要論者」と評している人がいたんですけれども、なかなか良い表現だなと思いました。
『みんな何らかの制限を課されていて自分の可能性に気付いていないだけで、ヒラサワに出来ることは誰にも出来る』というのがヒラサワの主張です。
ヒラサワに出来ることは誰にでもできる。これ、宇宙の法則。
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2014年9月14日
「排時光」で言う「汝光なり」は意味が違う。
文字通り、汝光なりと言っている。
昔から言うように。
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2020年8月22日
ちなみに排時光のイメージはこんな感じっぽいです。うーん、神々しい。
独房にさす排時光。 pic.twitter.com/BZXMNX9obp
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2017年12月11日
白く巨大で
「白く巨大で」の歌詞は私クラスのヒラサワに好評であります。比較的簡単な言葉が並んでいます。
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2013年8月23日
回=回のライブでアンコールに採用されていたし、なかなかのお気に入り曲の御様子。
『白く巨大でt0t1』という別バージョンが秘かに存在するらしいです。
歌詞中の『エンタグル』の意味が汲み取り切れないんですけれども、この曲から受けたイメージが宇宙創成のイメージなのでгипнозаによる支配を免れた新しい世界の始まりを描写しているのだと勝手に解釈してます。
Dμ34=不死
でぃーみゅーさんよん。ふし。
最初の女性ボイスが何を言っているかは不明。
曲はかなり怪しげなのですが、歌詞を丁寧に拾っていくと『無音の変遷に咲くキミの不動』『不朽の旋律に咲くキミを撃てず』などと前向きなフレーズが使われています。
思っていた以上に希望的な曲のようです。
とりあえず僕は『与えられた定義を変えてジャンキーから神になる曲』と考えています。
Dr.древние (Dr.Drevniye)
どくたーどれぶにーや。
曲調はゆったりとしているのに音は力強いのがアンバランスで気持ちいいです。
Dr.древниеを和訳すると「古代の人」とか「オリジナルの人」とか「原初の人」とかいう意味になるみたいです。
平沢進は『人間は生まれたときから大いなる可能性に満ちているが、様々な制限があるせいで十全に能力を発揮できていない』というような思想の持ち主なので、Dr.древниеはそれに準ずるような存在なんだろうなあと思っております。
庭師Kingばりにインタラ向きのキャラだと思うんだけれども核P曲だから出番無さそう。
Parallel Kozak
Parallel Kozakで最初に目撃したものを強い意思をもって観察し続けるなら、それは何の変化も示さず、最初の姿を維持します。しかしながら、途中で現れるミスリードの工作に従ってしまえば、それは一瞬で別の姿に変わってしまうのでありますから。
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2013年9月26日
変則的なリズムと声が気持ちいいですね。
僕には音楽的な素養は無いので何がミスリードなのかは分からずです。
Alarm
鳴れAlarm!鳴れAlarm!Ahhhhhhhhhhhh!!!!
低音から高音、シャウトまで。ヒラサワの声がより取り見取りの1曲。
гипнозаの引き起こす危機に対して『警戒せよ!』と注意を促しているような歌詞ですね。
109号区の氾濫
手慣れたUターンをキメ、不幸から逃げ惑う人々とは反対へ。
真っ暗だがランタンなど不要。
運転しながらチャットで新年のご挨拶を飛ばし、小高い丘へ。
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2016年1月2日
今年の年末は自らの教訓に従いましょう。
ランタンなら不要
逃げ惑う群れとは反対へ— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2017年1月1日
『ランタンなど不要』は実はヒラサワお気に入りのフレーズ。
己の感覚だけを信じて『みんな』の言う安心な方向には向かわないという意味でしょうかね。
歌詞の中ではどことなく世間の混乱を楽しんでいるような雰囲気があります。
109区というのはイチマルキュウだけに渋谷の暗喩か?と一瞬思ったのですが、多分違いますね。本当の意味はヒラサワにしか分からないと思うので深くは考えません。
Timelineの東
和風テクノ・エンディング曲風味。
どことなく泣かせる歌詞とメロディです。
ライブの定番曲にしてほしいんですけれども核P曲だからなかなか歌ってくれなそうなのが残念。
『タイムライン』というのはツイッターのアレのことではなくて、SF用語で『時間軸』とか『世界線』を意味するタイムラインのことでしょう。
гипнозаから解放されたことで、自らの意志で歩きはじめるヒト科の希望と展望の曲です。
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