この小説の存在そのものがギャグだと思います。真面目に。
作者は筒井康隆。言わずと知れた日本SF界の巨匠です。代表作は『パプリカ』や『時をかける少女』になるんでしょうか。
個人的にはSF作家というよりかは『頭の良いイタズラ好きなおっさん』という印象を持っています。
イラストを手掛けるのはいとうのいじ。涼宮ハルヒの憂鬱のイラスト担当で一躍有名になった絵師さんですね。
あらすじ
あらゆる男子生徒から熱視線を浴びまくる超絶美少女・ビアンカ北町は、生物研究部員としての生殖の研究が大好き。
ウニを使ったいつもの実験に飽き飽きしていたところで、ついに閃いてしまう。毎日凄まじい愛の波動を送ってくる可愛い後輩・塩崎哲也に、研究に協力してもらおう!
そんな中、部活の先輩・千原信忠が実は未来人だったと判明して!?
まさかまさかの美少女ライトノベル、まだ見ぬ筒井康隆の新世界、開幕!
Amazonから引用
筒井康隆がラノベに挑戦すると聞いて『時かけ』みたいな物になるのかと思ったら主人公のビアンカ北町が部室の隅っこで本を読んでいる内気な少年の精液を手コキで採取したがってるみたいな話が始まって何じゃこりゃ!?ってなりました。
とは言えライトノベルなんだからエロも寸止めで終わるんでしょ?と思っていたらとんでもない。実際に手コキで精液を採取しだすし、本文中には『陰茎』とか『抜く』とかいった下品な言葉が平気で飛び交います。
各章に付けられたタイトルも『哀しみのスペルマ』『喜びのスペルマ』『怒りのスペルマ』『愉しきスペルマ』『戦闘のスペルマ』といった感じでひどいなんてもんじゃない。
ビアンカ・オーバースタディの内部構造(謎のご都合主義、やたら美人な女キャラ、唐突に出てくる未来人、ラストがとりあえず前向きで爽やか等)を指して『メタ・ライトノベル』『筒井康孝なりの皮肉』と批評する声もありますが、内部構造が皮肉めいてるのはもちろんのことこの小説にいとうのいじのイラストを付けてライトノベルとして出版したことも含めて皮肉ギャグとして扱うべきなんじゃないかと個人的には思います。
これをラノベとして出版するなんて筒井康隆以外だったら絶対許されないと思うんだけれども、出版社がこれはラノベです!!!って言い張って売ってるの流石にギャグでしょ。
小説の内容自体は面白いのか面白くないのかがもうよくわかりません。くだらないのは間違いないです。
ちなみにこの小説。筒井康隆に後付けで許可を取って作られた、全く別人の描いた続編として『ビアンカ・オーバーステップ』なるものも発売されています。
どこまでも無茶苦茶だな……
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