10年前の伝説的作品にネタバレもクソも無いと思うので最後まで書きます。
今(20/10/22現在) この本アマプラ会員だとキンドル版が読み放題です。
アマプラの読み放題本は結構入れ替わり早いので読みたい人はお早めに。
著者について
著者は谷川流。今回紹介する『涼宮ハルヒの憂鬱』で第8回スニーカー大賞を受賞後デビュー。兵庫県の西宮出身で、アニメ版のハルヒでは舞台のモデルとして西宮近辺が使われています。
イラストはいとうのいぢ。この前このブログでもいとうのいぢさんがイラストを担当するラノベを紹介しましたね。ラノベっていうか筒井康隆の悪ふざけなんですけれども。
あらすじ
「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」。
入学早々、ぶっ飛んだ挨拶をかましてくれた涼宮ハルヒ。そんなSF小説じゃあるまいし…と誰でも思うよな。俺も思ったよ。だけどハルヒは心の底から真剣だったんだ。それに気づいたときには俺の日常は、もうすでに超常になっていた―。
第8回スニーカー大賞大賞受賞作。
Amazonより引用
感想
言わずと知れた一大ムーブメントを起こした作品です。
御多分に漏れず僕もそのムーブメントに巻き込まれた1人であり、自分の高校時代とハルヒは切っても切れない関係にあります。
そんなもんだから余計な先入観を持たずに読もうとしても、ハルヒのセリフは平野綾の声で再生されるし、地の文はどうやっても杉田智和の声で再生されてしまって無理でした。
原作版ハルヒを読むのは10年ぶりぐらいなんですけれども、改めて読むとやっぱり凄いですねこの作品。プロローグの冒頭三行だけでもう面白い。
サンタクロースをいつまで信じていたかなんてことはたわいもない世間話 にもならないくらいのどうでもいいような話だが、それでも俺がいつまで サンタなどという想像上の赤服じーさんを信じていたかと言うとこれは確信を持って言えるが最初から信じてなどいなかった。
幼稚園のクリスマスイベントに現れたサンタは偽サンタだと理解していた し、記憶をたどると周囲にいた園児たちもあれが本物だとは思っていないような目つきでサンタのコスプレをした園長先生を眺めていたように思う。
そんなこんなでオフクロがサンタにキスしているところを目撃したわけでもないのにクリスマスにしか仕事をしないジジイの存在を疑っていた賢しい俺なのだが、宇宙人や未来人や幽霊や妖怪や超能力や悪の組織やそれら と戦うアニメ的特撮的マンガ的ヒーローたちがこの世に存在しないのだということに気付いたのは相当後になってからだった。
谷川 流. 涼宮ハルヒの憂鬱 「涼宮ハルヒ」シリーズ (角川スニーカー文庫) (Kindle の位置No.25-37). 角川書店. Kindle 版.
キョンという人物の人となりをよく表しながらも、冒頭で思いっきり不思議なことを否定することで、メタ的に『これから不思議なことが起こりますよ』ということを暗示している良い文章ですよね。
序盤は宇宙人も未来人も出てこないんで、展開だけで言うと結構退屈なんですけれども、キョンの独白の面白さとハルヒのキャラクター性が良いのでまったく問題なく読めます。
中盤になって怒涛のように明かされる各登場人物の隠された役割と、終盤の畳みかけるような展開は内容を知ってても面白かったですねー。
ハルヒの奇矯の振る舞いは、自分がちっぽけな存在であることに対する不安の裏返しで、キョンも内心ではそこに憧れがちょっと混じってるんですよね。今読み返してようやくわかりました。
宇宙人も未来人もいない日常に退屈したハルヒはクライマックスで世界を壊そうとしますが、最後はキョンのキスによって元の世界に留まることを無意識のうちに決意します。
そして宇宙人も未来人もいないけれども、ハルヒだけのドキドキする日常が始まったという結末になるんですけれども、今この歳になって改めて見るとすごく感動的でした。まあ、ラストの解釈は岡田斗司夫の受け売りですけれども。
感動が止まらなくなって、読み終わったあとアニメ版も見直しましたけどこっちもめちゃくちゃ出来良かったです。
やっぱいいわ、ハルヒ。
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