ちょっと逆転裁判っぽい本です。
著者について
著者は弁護士の弘中惇一郎。数々の裁判で無罪を勝ち取っていることから『無罪請負人』の二つ名を持ちます。
ロス疑惑の三浦和義、政治家の小沢一郎、鈴木宗男、実業家の堀江貴文、そして日産のカルロス・ゴーンとそうそうたるメンツの弁護を行ってきた人物なのですが、金銭や名声よりも『面白そうかどうか』『被告人を信じられるかどうか』で依頼を選ぶ一風変わった弁護士です。
過去に弁護士の本はこのブログでも一冊取り上げています。あんま良い本じゃなかったですが。
概要
多くの著名事件を手がけ「無罪請負人」の異名を取る辣腕弁護士が、日本の刑事司法の問題や特捜検察の腐敗ぶり、世論を真実から遠ざけるメディアの問題点などを提起する。
Amazonより引用
感想
この本は弁護士である著者から見た検察やマスコミの問題点を指摘するために書かれた本です。しかし、まず単純に物語として面白いんですよ、この本。
下記は今から約10年前の『障害者郵便制度悪用事件』について書かれた章の導入部です。
政官財が絡む大型刑事事件は、通常の警察捜査と異なり、東京、大阪、名古屋にある地検特捜部が独自に捜査、起訴する。特捜検察は「日本最強の捜査機関」と呼ばれ、裁判で完全無罪を出さない〝不敗神話〟さえ謳うたわれていた。
この事件はその数少ない例外、検察が完敗したケースである。事件の捜査は悪質にしてずさんなものであった。このことは刑事裁判の過程で次第に明らかになり、さらには判決後に重要証拠であるフロッピーディスクを検察官が改ざんしていたことが発覚し、現職検事三人が逮捕される不祥事にまで発展して、人々の検察不信を決定的なものにした。
無罪請負人 刑事弁護とは何か?より引用
本の中で、弘中弁護士が検察の嘘をロジックで切り崩す場面はまるで逆転裁判のようで痛快に思うと同時に、国家権力たる検察がフロッピーディスクの更新日を改竄するだなんて中学生みたいな手口を使ってまで無罪の人間を陥れようとしていたのかと思うとなかなか寒気がする話です。
検察の事情聴取もひどいもんで、この本によると
・検察の思い描いたストーリー以外のことを喋っても調書に取ってもらえない
・長時間密室で軟禁された挙句『喋ったことは後で変えることが出来る。もし気に入らなければ後から変えることが出来る(※実は出来るけどめちゃくちゃ難しい)』と言われて認印を押すことを半ば強要される
・他の人も認めていると、嘘をついて同調圧力によって都合のいい供述をさせようとする
と、『そりゃ日本の司法は中世同然』と揶揄されるわみたいな手口だらけで、読んでいて憤りすら覚える内容でした。
この本では、著者が担当した小沢一郎の裁判や鈴木宗男の裁判でも、検察が同様の手段で関係者の自白を強要していたことが生々しい物語として記されています。
自分がいつ刑事事件の関係者になるかなんて分からないですし、身を守る意味でも読んでおいて損のない一冊です。
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