仕掛けを見破っただけでは終わらない(沙高樓綺譚/浅田次郎)

小説
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浅田次郎の本は10年前に1冊読んだきりなんですけれども、久々に読んで「この人天才かよ」と思いました。 

沙高樓綺譚

 

電書版と文庫版で表紙が違うんですけれども、中身は一緒のようです。

ちなみに本の読み方は「さこうろうきたん」です。

 

 

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あらすじ

「沙高樓へようこそ」女装オーナーの言葉で、今宵もめくるめく百物語が始まる。日本刀の真贋をめぐる真実、かつての日本映画界の伝説、やくざ渡世の内幕―巨万の富と名誉を得た者が胸に秘めてきた驚愕の光景が、鮮やかな語り口とともに展開する。ストーリーテラー・浅田次郎が本領発揮した超贅沢な短編集。

 

Amazonより引用

 

この小説は嘘が許されている

青山の高層ビル、沙高樓と呼ばれる一室に集められたお金持ちや著名人が、それぞれ「誰にも言えなかった話」をひとりずつ披露していくという形式の短編集です。

全ての短編はあくまで『語り手がその日の沙高樓に集まった人間に喋っている』という体裁の一人称視点で書かれています。

この設定、何が面白いって『地の文に嘘が混じっている』というのが許されるんですよ。

話している人間も、別に悪意があって嘘をついてるわけじゃないんです。とても他人に話したくないような話だから本当に重要な部分をぼやかしていたりするんですよね。

最初は『ちょっと変わった話』程度だったものが、どこかのタイミングで語り手の『嘘』や『ごまかし』に気付いた瞬間、すごいゾワっとするように作られています。

短編同士の関連性は薄くて、「あの話とあの話が繋がってたのかー!!」みたいなことは無かったのですが、読み終わった後の満足感はすごかったです。

 

仕掛けを見破っただけでは終わらない

 最初に収録されている「小鍛冶」という短編は専門用語が多すぎて、ちょっとしんどかったんですけれども、他の短編は全部すごい完成度の高さでした。

特に「百年の森」という短編が僕はお気に入りなんですけれども、勘の良い人はどこに『仕掛け』があるかというのはすぐに見抜けると思います。

ただ、この話は『仕掛け』を見破った瞬間、すごく気持ち悪くなるんですよね。

「そういう話だとしたら、本当に気持ち悪い」と思いながら読み進めて、 本当にそういう話だったときの「こいつやりやがった」感が忘れられません。

  


 

 

プロフィール

読書好きのゲーマー。
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