少し前までは「お前もアニメオタクなら当然これぐらい抑えておけよ?」という作品がありました。
古くはそれがガンダムだったりエヴァだったりしたのですが、そのような基礎教養がまだ存在していた頃の末期の作品がFate、ひぐらし、ハルヒだと思います。
本作はその中でも、現在でもスピンオフを排出し続けている化け物コンテンツ、Fateシリーズの最も原初にあたるFate/stay nightの番外編的な作品です。
目次
あらすじ
第五次聖杯戦争の終結から半年後。そこには再び現界したサーヴァントとの穏やかな日常が存在していた。ありえない現実でありながら、それらに疑問を抱かない前聖杯戦争参加者達。そして存在しないはずの聖杯をかけて、聖杯戦争が再開しているという。そして夜になると冬木の町は謎の獣とそれを率いるように立つ少女が現れるようになる。
wikipediaより引用
お気楽番外編と思いきや……?
ゲームとしてはかなりシンプルなノベルゲームです。
プレイヤーは前作の主人公・衛宮士郎の視点を借りて、本編(stay night)終了後に起きた「繰り返される4日間」の謎を解くためにゲームを進めることになります。
繰り広げられるシナリオは番外編らしいコミカルな物が多く、血生臭かった前作とのギャップに最初は戸惑いましたが徐々にそういった空気感にも慣れてきます。
しかしこのゲーム、ただのお気楽番外編かと思いきや、真実に近づくにつれて黒い(いつもの)奈須きのこ節が発揮されるようになり、
終盤には従来のFateファンをも満足させてしまうほどのシリアスな展開になっているという恐るべき1作です。
繰り広げられるシナリオはキャラ重視路線
とはいえ、このゲームはストーリー重視の前作と違って徹底的にキャラ重視の作りになっています。
「繰り返される4日間」の謎の話が進むのは稀で、それよりもセイバーやランサー等、前作に登場したキャラの日常的なやりとりを見るのが主目的のゲームです。
キャラ萌え層の需要を満たすために前作で登場したヒロインとのデートイベントなんかもあるんですけれども、僕自身はあまりキャラ萌えするタイプではないので、そこにはあまり楽しさを感じませんでした。
クリアまでかかった歳月:1年半
ノベルゲームとしては申し分なく、スキップも巻き戻しも自動文字送りも完備。
声優さんの演技は飛ばすのが勿体ないほど熱が入ったものとなっており、ほとんどのセリフを飛ばさずに楽しんでいたら本編クリアまで約1年半の歳月がかかりました。
それでいてクリア後のおまけシナリオや、やたらとボリューミーなミニゲームもあるので、今のペースで遊ぶとあと1年半は追加で遊び続けられそうです。
プレイヤーの心情をも取り込んだゲームシナリオとしての完成度の高さに脱帽
肝心のシナリオですが、完成度がめちゃくちゃ高いです。
詳細はネタバレになるから避けるのですが、『メタ的に存在するゲームシステムが実はシナリオに絡んでいる』というだいぶ難易度の高そうなことをやっているんですよね。
こういうタイプのシナリオは、ゲームの主人公との気持ちのシンクロ率がすごく上がって好きなんですけれども、やっぱり作るのが難しいのか思ったより少ないんですよ。
近年だと『UNDERTALE』というRPGがメタ的なシステムをシナリオに組み込んだ傑作だったんですけれども、なかなかそれに匹敵する完成度の高いシナリオでした。
「プレイヤーにどう遊ばせるか」の構成も上手い
今作は奈須きのこ以外のライターもシナリオに参加しているせいか、イベントのクオリティにはまあまあバラつきがあるのですが、出来の良いイベントは後半の方にまとまっているんですよね。
だから前半はゲームへの純粋な興味、後半はシナリオの面白さに引っ張られて遊ぶように作られていて、「プレイヤーにどう遊ばせるか」というゲームの構成もなかなかよく出来ています。
ダレてきそうなところに奈須きのこが手掛けたシリアスなシナリオが入ってきて、最後まで楽しく遊ぶことが出来ました。
ファンディスクとして満点の出来
また、Fate世界の「パラレルワールドは存在する」という設定を上手く利用していて、プレイヤーに想像の余地を与えるという気遣いも地味ながら見事です。
前作はどのヒロインと仲良くなるかによってその後の展開(キャラの生死も含めて)が大きく変わったのですが、今作は敢えてどのルートの続きかということを明示せずに作られています。
正史を確定させずにその後の時間軸を描くというのはかなり難易度が高い作業だったと思います。
それでいてクライマックスはまさにファン待望の気持ちの良い劇場版アニメ的展開で、ファンディスクとしてかなり練り込まれた作品でした。
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